積読書店員のつくりかた

とある書店員が気ままに書く、本と本屋さんとそれをつなぐ人々についてのつぶやき。書店と読書とイベントな日々、ときどき趣味。

『紋切型社会』からみた「『他者誘引型』自己完結思考」社会

はじめに

あえて言おう。本書を「新進気鋭」の著者による「渾身」の評論作だと「絶賛」するつもりはまったくない

書き手としての彼は、「社会」を自在に動き回って、ステレオタイプな表現をぶった切る。鮮やかな切り口、そしてこの切り方は「揚げ足取り」にもなり得る。その批評の構図を思い描くと、時として思考の罠に陥る可能性もある。

また、帯文に選ばれた文章や各氏の言葉もまた『紋切型』表現に陥っている恐れがある。「新しい書き手」、池澤夏樹の「読後はまさに痛快。」や白井聡の「陳腐な言葉と格闘」との表現すらも。それは私自身の反応にも言えること。

『紋切型社会』の内容

はじめにで触れたように、本書は「思考の罠」が伴う危険もあり、また内容があまりに多岐に渡っている。「快刀乱麻」ぶりもここまで来れば……「痛快」と「不愉快」の感覚差とは案外紙一重だとさえ思えてしまう。

今回は示唆に富む一冊『紋切型社会』を、下記の4つの視点からご紹介したい。

  • 時事問題への「批評」
  • 社会現象への「批評」
  • メディアへの「批評」
  • 「編集者」武田砂鉄

なお、本記事ではすべて敬称略で通させていただく。

紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす

紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす

 

 

内容をご紹介する前にまずは、下記にある目次を見てほしい。本書は、社会やメディアの批評に留まらず、政治思想や未開の「聖域」にまで踏み込んでいる。

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書店員のフェアの作り方【夏だ、サマーだ!】本屋の夏、その風物詩である「夏文庫」も終了間近

今週のお題「一番古い記憶」
あれはいつのころかまでは覚えていない。けど夏だった。

Yondaパンダくんがいたことだけは間違いなかったし、書店員でもなんでもない「ただの一読者」ではあった。けれど彼が一際目立っていただことは間違いない。

「Yonda?CLUB」は2014年1月24日をもって終了いたしました。

さて、エッセイ的な脈略のない書き出しで始まりました久しぶりのブログ記事。

世間的な夏休みで言えば、海水浴や花火、学生にとっては長期休暇と宿題とかになるのでしょうが、書店にとっての夏(夏休みという休みはないけれどもw)はきっと『彼ら』の存在に違いありません。 

彼らとは、『夏文庫』!
そして、今回取り上げるテーマは、書店における『フェア展開』です。

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本屋の書籍ジャンル担当者は、何をしているのか~理工書を例にした書店員の業務内容~

いまのお店にやって来て、そして理工書担当者として、はや数か月ほどが過ぎようとしております。

今回は、理工書を例にした書店員の「業務内容」、『本屋の各書籍ジャンル担当者がどのような仕事をしているのか』を明文化すると同時に、自分自身の記録として後日振り返ろうとする目的の記事となっております。

主に業界クラスタの皆さま向けの記事ではありますが、普段本屋をご利用される方に向けて「本屋の棚がどのようにつくられているのか」を公開すると共に、ご覧いただくことで「近くのお店に行ってみよう!眺めてみよう!」と思っていただく契機となれば、と願う記事でもあります。


yoshinoさんの言うところの「つまんねー棚」かもしれませんが、私の時間と愛情と願いを込めて耕している最中の棚。「面白い棚」への道のりは長く険しいものだと自覚しておりますが、一人でも多くの方の役に立てることを祈って、黙々と棚を耕しております。

絶対にすべての愛を降り注いだ棚にしてやる! そう意気込む、私ふぃぶりおなのであります!! (そして積読行為への格好の言い訳w)

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記事を書く意図

まずは、この記事を書く背景をお伝えしなければなりません。

*1:本写真は、理工書棚のイメージ画像として、某書店様に好意で撮影をお許し頂いた売り場写真です。私が追い付けない素晴らしいフェアをお作りになられる方。

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