書店員である私が本屋大賞に投票しなかった、たった1つの理由【本屋大賞への批判は……】
ある作家は言った、「書店員の思い上がり。本のソムリエ気取り」だと。
また別の作家が言った、「一部書店員の勘違いで2万店あった書店は1万5千店に減った」と。
そしてある「ニュースキャスター」は言った、「芥川賞と本屋大賞の区分けがだんだん無くなってきた気がする」と(実況やっていればよかったのに)。
その他にも本屋大賞批判で検索すると数多くの記事がヒットします。
「本屋大賞は商業主義」・「権威主義」、「すでにベストセラーなものを後追いしても意味がない」、「ランキング依存を助長している」。果たしてこれら批判は。
まずは本屋大賞のこれまでの歴史と現状を振り返ってみましょう。
続きを読む書店員として訴えたい、本屋での「万引き」という名の「窃盗」問題について【追記あり】
はじめに
本屋が減ってきている。その原因はなんでしょうか。
「本が売れない」、「ネット書店(イコール帝国)があるからリアル書店なぞ必要ない」、「図書館で借りれば無問題」と邪推すればキリがありません。取り巻く現状が音速になっているのに旧来通りのスピードで運行しようとする、その腰の重さにこそ原因があると個人的には思っております。
面白い。実例を挙げての、店頭(アマゾン・MJ)在庫や取次倉庫を軸に考える出版流通。物流やシステム投資の怠慢と機動性の希薄さが帝国の後塵を拝する結果に繋がっているというのが個人的な印象。 / “「品切れは何故おこるのか?」 科学的に…” http://t.co/EnTjq06ead
— 積読書店員ふぃぶりお (@fiblio2011) 2015, 9月 13
このような「書店減少」・「出版不況」という有難くない枕詞で語られがちな業界の中において、規模の大小を問わず、本屋の頭を悩ませている問題があります。それは、人員不足や技能の伝承もあります。けれども自分で蒔いた種でもないのに引き起こされて、各方面が頭を悩ませる問題があります。
タイトルに掲げた、いわゆる「万引き」です。そして、強調しておきたいことがひとつあります。今まで複数回ツイートもしてきてクドいようですが何度でも言います。
あれは「万引き」ではなく「窃盗」であると。本記事では、本屋が減る間接的な原因のひとつ(と私が考える)「万引き」問題を取り上げます。
「万引き」とも言われますが、正確には「窃盗罪(10年以下の懲役or50万円以下の罰金)」だと補足しておきます。"書籍の万引きという行為がいかに大きな損害を与えているか。周知は欠かせない。" / “「万引きで本屋がつぶれる」ってマジ…” http://t.co/L28T0jHMNw
— 積読書店員ふぃぶりお (@fiblio2011)2015, 4月 20
「万引き」被害の現状
お店で商品が無くなる理由
続きを読む『紋切型社会』からみた「『他者誘引型』自己完結思考」社会
はじめに
あえて言おう。本書を「新進気鋭」の著者による「渾身」の評論作だと「絶賛」するつもりはまったくない。
書き手としての彼は、「社会」を自在に動き回って、ステレオタイプな表現をぶった切る。鮮やかな切り口、そしてこの切り方は「揚げ足取り」にもなり得る。その批評の構図を思い描くと、時として思考の罠に陥る可能性もある。
また、帯文に選ばれた文章や各氏の言葉もまた『紋切型』表現に陥っている恐れがある。「新しい書き手」、池澤夏樹の「読後はまさに痛快。」や白井聡の「陳腐な言葉と格闘」との表現すらも。それは私自身の反応にも言えること。
「渾身病」に笑いが止まらない。「最近は書籍のコピーに『渾身』が多すぎる。腹が立つ。もうやめろ」そして武田さんの痛快さが分かるレビュー。 / “全米が泣きそう『紋切型社会』 - HONZ” http://t.co/I6cFAnSD2s
— 積読書店員ふぃぶりお (@fiblio2011) 2015, 6月 13
武田鉄矢氏がラジオで「紋切型社会」を紹介という大事件が発生。 「名前が似ていますが赤の他人です。でも新進気鋭の気になる若手批評家です」https://t.co/QapHNHPgd4
— 武田砂鉄 (@takedasatetsu) 2015, 8月 23
『紋切型社会』の内容
はじめにで触れたように、本書は「思考の罠」が伴う危険もあり、また内容があまりに多岐に渡っている。「快刀乱麻」ぶりもここまで来れば……「痛快」と「不愉快」の感覚差とは案外紙一重だとさえ思えてしまう。
今回は示唆に富む一冊『紋切型社会』を、下記の4つの視点からご紹介したい。
- 時事問題への「批評」
- 社会現象への「批評」
- メディアへの「批評」
- 「編集者」武田砂鉄
なお、本記事ではすべて敬称略で通させていただく。
内容をご紹介する前にまずは、下記にある目次を見てほしい。本書は、社会やメディアの批評に留まらず、政治思想や未開の「聖域」にまで踏み込んでいる。
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