本読みの人が、熊本と熊本の本屋を支援するための6つの方法
早いもので、熊本地震の発生からまもなく2か月が経とうとしています。最近は報道も少なくなってきた印象が否めません。
あまりこういう写真は撮りたくなかったし、公開もするつもりもなかったんだけど、熊本地震がほとんどニュースにならなくなった事で、隣県の福岡県ですら「あらかた復興した」みたいに思っている人が多いので、熊本県上益城郡益城町の今をアップする。 pic.twitter.com/9BsRFxw92i
— NOF (@nof_toro) 2016年6月7日
先日、幹線道路を久しぶりに通っていたら、一度行ったことのある飲食店が、悲しいことに閉店していました。その付近にも、ガソリンスタンドや小売店も多数ありますが、休止中のお店は少なくありません。
そして、県内でも、当然のことながら、まだすべての店舗が営業を再開で来ている訳ではありません。
本屋も同様です。営業再開にこぎつけたお店が増えてきた一方で、建物にダメージを受けたためにすでに取り壊された「金龍堂東バイパス店」さんや休業中の書店(リストをのちほど掲載します)があります。
いまだ営業再開が叶わない店舗に勤める店員さんはどれほど辛い思いをしているのでしょう。接客業を愛してやまない小売業の友人は、「お客さまと会えない状況がもどかしいし、寂しい」とぼやいています。また別の友人は、「(ハローワークにも人が溢れかえっていて)仕事を探しているがなかなか見つからない」と嘆いていました。被災のために、泣く泣く失業した知り合いもいます。
仕事がある現状がありがたいのだと言い聞かせる他ありません。
記事公開のきっかけ
今回、 空犬さんがまとめて、日々更新いただいている下記記事を拝読して、ぜひ現地から地震発生後の本屋の状況についてお伝えしたく、記事を書きはじめました。
また報道が少なくなってきた現状で、引き続きお願いしたい支援先を紹介したく願っております。この記事では、休業中の本屋さんリストと気にかけていただきたい支援先リストも掲出しておりますので、熊本の方にも各地の方にも参照いただける記事になればと嬉しく思います。
⇒(リンク先)空犬通信 熊本の本屋さん【更新】
熊本県内の本屋における、休業店舗の一覧
まず、地震による被害状況などは新文化の参照に情報を整理すると共に、関係先リンクを掲載しました。特に、大型ショッピングモールに入店している店舗を中心に被害が大きくなっているようです。
⇒(記事リンク先)【新文化】 - 〈熊本地震〉書店の被害・運営状況
ただし、熊本県内における書店の休業店舗をすべて網羅できている訳ではありませんので、その点はあしからずご了承ください。
また、もし追加や訂正の情報等をご存知の方がいらっしゃいましたら、コメントやツイッターなどでお声掛けいただければ幸いです。
営業中の書店については、出版取次協の『日本出版取次協会|平成28年(2016年)熊本地震』ページと書店マスタ管理センターに掲載されている『熊本県書店営業情報』等の公開情報が参考になります。
休業中の書店一覧リスト
地域名 | 書店名 | HP/SNS | 被災状況 |
熊本市中央区 | 金龍堂まるぶん店 | blog |
建屋壁面に亀裂。入店不可。 |
熊本市中央区 | くまざわ書店くまなん店 | 会社HP | 店内入店不可。 |
熊本市中央区 | TSUTAYAAVクラブ帯山店 | 店舗ページ | |
熊本市東区 | TSUTAYAAVクラブ御領店 | 店舗ページ | 什器倒れ。 |
熊本市東区 | 金龍堂東バイパス店 | 会社HP | 建屋壁面落下(建物損壊)。入店不可。 (5月下旬に現地を確認したところ、建物は解体取り壊し済みの上、更地に) |
熊本市南区 | 紀伊國屋書店熊本はません店 | 店舗ページ | スプリンクラー作動、商品水濡れ、ゆめタウン被害あり。 営業再開未定(11月頃再開予定との報道も(*1。) |
熊本市西区 | TSUTAYAAVクラブ田崎店 | 店舗ページ | 天井一部崩落、ガラス割れ、分電盤崩壊、 非常灯外れ、排煙窓閉まらず、什器全て倒壊、入店不可。 |
熊本市 | 明林堂書店サンピアン店 | 店舗ページ | 棚倒壊はなし、商業施設(サンピアン)営業中止。 復旧に数ヶ月要(11月頃再開予定との報道も*2。) |
宇城市 | 蔦屋書店小川町 | 店舗ページ | イオン側入り口天井崩落、入店不可。 |
上益城郡 | 蔦屋書店嘉島 | 店舗ページ | 什器倒れ多数、壁面什器転倒。 (お盆明け以降の営業再開を目標にしているとの情報も) |
菊池郡 | ブックガーデン大津 | ショーケース・棚転倒、入店できない。 |
皆さまに応援をお願いしたい、6つの支援方法と支援先
まず支援先リストを、掲げる前に知っていただきたい本屋のフェアがあります。
「九州・熊本の本を売りたい」。そんなコピーを掲げ、熊本地震にみまわれた現地在住の作家の本や、地元出版社の雑誌などを集めたフェアが、大阪市の書店で開かれている。(略)大阪市北区の紀伊国屋書店グランフロント大阪店の真ん中に4月下旬、熊本県のキャラクター「くまモン」のイラストをあしらった特設コーナーができた。熊本在住の作家石牟礼道子さんの小説、評論家渡辺京二さんの歴史書など、熊本に関連する本や雑誌100種類以上が並ぶ。
(中略)
紀伊国屋書店の山本さんは「書店のフェアが何かの役に立つのか、正直迷いもあった」と話す。今月上旬に売り場で、熊本から大阪に一時避難しているという女性客から「気に掛けてくれて、ありがとう」と声をかけられた。「自分の立場でできることをやればいい、と迷いが消えました」
大阪発信の“本”を通じた支援のかたち。それは、なにかをしたいという書店員の方の思いから結実した一つの方法です。“熊本”と意識したうえで、その関係する方々の本を手に取っていただくこともひとつの支援なのだと思います。大阪や名古屋、東京にお住まいの方はぜひとも紀伊國屋書店グランフロント店さん、七五書店さん、青山ブックセンターさんでフェアを拝見いただくことを願っております。
このフェアのおかげで、作家・漫画家さんの名前も各種上がっています。『ONE PIECE 1 (ジャンプ・コミックス)』の尾田栄一郎先生が熊本出身だと今回初めて知った方も少なくないのではないでしょうか。
「九州・熊本の本を売りたい」書店で支援フェア―
— 朝日新聞熊本総局 (@asahi_kumamoto) 2016年5月25日
各地の書店でそんな動きが広がっています。@Kino_GFOsaka、@75bs、 @Aoyama_book などの取り組みが紹介されています。#九州・熊本の本を売りたい、#熊本地震
https://t.co/Sat5kZkbwU
ぜひ熊本出身在住・縁の深い作家漫画家の先生方にスポットライトが当たりますように。石牟礼道子、伊藤比呂美、江口寿史、尾田栄一郎、梶尾真治、川崎のぼる、坂口恭平、高浜寛、田中芳樹、原ゆたか、深見真、緑川ゆき、村枝賢一、室山まゆみ、森本梢子他(いずれも敬称略)#九州・熊本の本を売りたい
— 積読書店員ふぃぶりお@熊本 (@fiblio2011) 2016年4月27日
前フリの説明が長くなりましたが、ようやくタイトルの本題に入ります。長らくお待たせしました。
それでは、ようやく支援するための方法6つ(+α)をご案内します。それぞれの団体の活動に興味を持った方は、それぞれのリンク先で支援をしていただくことを切に願っております。
熊本に関連する写真集を手に取ってみる
熊本地震を記録した写真集等は現在3点が刊行されています。復刻アサヒグラフから写真集と、下記の熊日新聞社からの報道写真集、読売新聞社の新聞濃縮版です。いずれをお買い上げいただいても、収益の一部は熊本地震に対する寄付につながります。
現状をご覧いただくことで、どれほどの地震の衝撃だったかを確認できるタイトルとなっています。九州以外では本屋の店頭に無い場合もあるかと思いますが、東京では店頭に置いていただいている書店さんの情報もあります。
お近くに無い場合には、よろしければネット経由でも構いませんのでお手に取っていただければ幸いです(ぜひそのときは、可能ならば後述する金龍堂まるぶんさんを支援するためにe-honもご利用いただければ嬉しいです)。
また、ネット書店では販売していないけれども、阿蘇の現状を伝える写真集も作られました。私は、長崎書店さんで買わせていただきました。阿蘇の山が被害を受けている様子や、各地区の甚大な被害を写真によって伝えておられます。通販もされておられるようで、また写真展も企画されています模様です。
詳細等は下記Facebookページから確認いただければと思います。
熊本地震で傷ついた故郷の南阿蘇村を撮影し続ける写真家長野良市さんが、惨状を訴える小冊子を発行した。売り上げの一部を復興支援に充て、既に1500部を販売した。第2弾の発行に向けて準備を進めている長野さんは「地元観光の復興を支える息の長い取り組みにしたい」と意気込んでいる。小冊子は「ゼロの阿蘇Vol・1」のタイトル。
(中略)
一般社団法人「九州学び舎」が1部500円で販売。うち200円を復興支援のために寄付する。
九州を応援する出版社「伽鹿舎」を応援する
九州の本屋を応援するために、「九州限定」流通という試みに果敢な挑戦をされている伽鹿舎(かじかしゃ)さんは、熊本にいらっしゃる代表の方を中心に活動をされています。
伽鹿舎の出版は、営利目的ではありませんから、これまで絶版になっていた本、採算がとれないからと見送られてきた本の出版にも積極的に取り組んでいきます。
非営利ということもあり、今回の地震では少なからずダメージを受けて、今後の刊行がこれまで通りのスケジュールで行えるか不透明な部分もあるそうです。資金面でも、特に文芸読みの人には、ぜひとも伽鹿舎さんへのご支援をお願いできればと願っております。下記リンクをご参照ください。
営業休止中の「金龍堂まるぶん」を支援する
先日、久しぶりに動向が熊日で報道されたまるぶんさん。そのシンボルで、熊本中心部の上通りにある河童像が無事だったというニュースは、熊本県民としても1つ胸をなで下ろした出来事です。
熊本市の上通アーケードで「かっぱの本屋さん」として親しまれている老舗書店「金龍堂まるぶん店」が、熊本地震で被災し、長期休業している。再開は早くても8月下旬になりそう
そのまるぶんさんは、前半に掲示した休業一覧に入っている通り、まだ営業を休止しておられます。そのまるぶんさんを支援する方法があります。
それは、出版取次トーハンが運営する「オンライン書店e-hon : 本 コミック 雑誌 通販」というサイトがあります。通販ができると同時に、全国のトーハンから出版物を下してもらっている書店を中心に、店頭受け取りも可能なサイトです。
全国どこでもまるぶんで本が買える
【e-hon】という泣けるサイトがあるのです。e-honはアマなんとかや楽○ブックスと同じネット書店。
自宅にいながら本が買え、自宅で受けとれるというのはほぼ同じですが、このサイトには大きな特徴があります。利用者はそれぞれMy書店を選び、その書店から買う(あくまで形式上ですが)こととなります。
店頭で受け取りはもちろん、お客様の自宅に宅配(税込1,500円以上は送料無料)したときも、売上の一部はそのMy書店に入ります。つまーり!
そのMy書店を「金龍堂まるぶん店」にして本を買っていただければ、震災で休業中の金龍堂さんに売上という支援が届くのです!!
泣けるなー、コレ!
宅配はもちろん日本全国対応!これぞ神対応!地震の影響が残る間だけでも、Amaなんとかをちょっと控えて【e-hon】で本を買ってみる。これもある種の復興支援♪
(存じ上げる方のご投稿を、ご了解いただき、筆者一部修正の上で転記)
営業休止中で、店頭受取ができない金龍堂まるぶんさんですが、リンク先の「e-hon 本/金龍堂まるぶん店」に飛んで、ご登録されて、自宅にネット通販で本を購入すると、お休みされているまるぶんさんに売り上げの一部が入るというものです。
amazonでの購入も便利で手軽ですが、急ぎではない本やコミックを、「e-hon 本/金龍堂まるぶん店」経由で購入して、休止中の本屋さんを支援する方法もある。ということをご存知いただければと思います。
南阿蘇で頑張る「ひなた文庫」を応援する
阿蘇の裾野を行く南阿蘇鉄道にある日本一長い駅名の駅「南阿蘇水の生まれる里白水高原」の駅舎にある素敵なロケーションと風景に囲まれた「ひなた文庫さん」。
ご存知のように南阿蘇鉄道は一部を除いて、開通しておりません。その影響で、ひなた文庫さんもいまだに、本来活動されておられた駅舎の中で営業を再開することができていません。
今回、いますぐ支援の方法をお伝えすることができかねますが、近日イベント開催を計画されておられ、またネット経由で販売する方法も検討されておられるようです。
支援するための具体的な方法が、確立次第、またご案内差し上げる予定です。
地震に負けない、児童書専門店「竹とんぼ」を応援する
阿蘇の西原村に児童書専門店『子どもの本の店竹とんぼ』さんがあります。
熊本地震で被災した熊本県西原村小森地区の児童書専門店「竹とんぼ」が、地震後も営業を続けている。児童書専門店の先駆けとして、熊本に店を構えて35年目。突然襲った地震で店への主要アクセス道路は寸断され、来店客はほとんどいない。それでも店主の小宮楠緒さんは「子どもたちに一つでも良質の物語を届けたい」と前を向く。
こちらは絵本や読み物を取り揃えた本屋さんであると同時に、読み聞かせや地元紙への寄稿、県内書店の児童書担当者に対する啓蒙なども行っておられます。店主の方の「子どもたちに読んでほしい」という思いが伝わる、存在感のあるお店です。
その竹とんぼさんがある西原村は、地区によって集団移転の話が持ち上がっている場所です。今後の営業をつづけるためにも支援が不可欠だと思われます。支援のために、関係者の方が作られたオリジナルTシャツの販売が下記サイトで行われています。
Tシャツの利益分は、すべて竹とんぼへ寄付します。書店は地域の文化です。子どもの本の専門店は、子どもたちの未来を拓く灯火です。その火を絶やさないためにも、どうかご賛同、ご購入のほど、よろしくお願い致します。
読書環境や漫画資料の保存に関係するNPO2団体の活動を支援する
熊本県内で、読書や漫画に関する活動をしている団体が2つあります。
熊本子どもの本の研究会
子どもさんへの読み聞かせ、絵本についての講習会、会報誌には谷川俊太郎さんも寄稿しておられるなど読書環境を向上するための活動をされています。地震後に更新がされておられませんが、今後の活動継続ができることを願っております。
熊本漫画ミュージアムプロジェクト
漫画読みの方は、『金魚屋古書店 1 (IKKI COMICS)』という作品を読んだ方もいらっしゃるかと思います。この漫画の単行本で巻末コラムを書いておられ、モデルとも言われる古書店の元キララ文庫を経営しておられた橋本博さんが中心となって設立された団体です。
漫画家さんとのつながりもあり、湯前まんが美術館にも協力されるなどネットワークを生かして、熊本県内の自治体や図書館と連携したイベントを企画されています。将来的には、漫画資料をアーカイブとして保管したり、県内に漫画ミュージアムを建てるために活動をされていらっしゃいます。
今回の地震では、数十万冊に及ぶコレクションを保管する倉庫も被害を受けるなどしておられます(上記写真は被害の一例だそうです)。現在は、被災した地域にいる子どもたちに向けて、マンガを直接届ける移動図書館の設置を支援しておられるようです。また、ボランティア募集やマンガ及びマンガ関連資料の寄贈を募っておられますので、ぜひ確認してみてください。
⇒NPO法人熊本漫画ミュージアムプロジェクトHP - kuma-man ページ!
コレクションしたくなる「くまモン柄」の読書グッズで熊本企業を応援する
くまモン頑張れ絵のハッシュタグを始め、復興に向けたシンボルにもなってるくまモン。本読みの方が、本を保管するうえで嬉しいアイテムをご紹介します。こちらは、熊本市内の企業がネット販売しているアイテムです。
くまモンの形やサイズに合わせて、ブックエンドが4種類あります。
熊本企業が運営・販売している応援。1個からでも送料無料で、かつギフト用にも発送していただける神対応なお店なのでぜひ利用してみて下さい。
さいごに
ご紹介した支援の方法をご参考に、ぜひともそれぞれのお店や団体さんに温かいご支援をいただくことを願っております。
まだまだ日常は簡単には回復しませんが、揺れも比較的収まってきて、普段の生活は落ち着きを取り戻しつつあります。引き続き、皆さまのお気遣いに甘えることなく頑張ってまいります。
報道は少なくなっておりますが、いろいろな形で、ときどき熊本のことを思い出してもらえれば嬉しいです。永くなりましたが、以上、熊本の現場から、積読書店員がお送りしました。
日本全国や世界中から熊本を応援してもらって、本当にありがとうだモン。熊本がもっと元気になって笑顔が広がるようにがんばるモン!今日からツイートも再開するモン。これからも熊本をどうぞよろしくお願いしますモン! pic.twitter.com/3tzYlQfbIz
— くまモン【公式】 (@55_kumamon) 2016年6月1日
次回更新は、前掲の写真に載っている熊本関連本を中心としたご紹介の記事を予定しています。
(関連リンク)
営業再開された長崎書店長崎健一さんのインタビューが掲載された「善き書店員」に関する記事があります。