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積読書店員のつくりかた

とある書店員が気ままに書く、本と本屋さんとそれをつなぐ人々についてのつぶやき。書店と読書とイベントな日々、ときどき趣味。

書店員のリアル。『書店ガール』を観ながら・読みながら考えた、本屋の仕事と苦悩と喜び。



『書店ガール』という楽しみの区切り

『書店ガール』が放送していない火曜日は火曜日じゃない!と非常に名残惜しい気持ちに駆られている本日。視聴者のみなさま、書店、版元を始めとした業界関係者のみなさま、そしてまゆゆ推しのみなさまにおかれましては、いかがお過ごしでしょうか……。

日本全国の業界関係者が集結していた? かどうかはさておき、放送内容のリアルさは少々物足りないというツッコミが私のTLでも見受けられました。まぁドキュメンタリーではないので、医療ドラマしかり刑事司法ものしかり、純粋なリアルを追求したものではありませんが書店員のお仕事を垣間見てもらうきっかけになったのではないでしょうか。

togetter.com


そして、ロケ地となったジュンク堂書店吉祥寺店さんや映った他書店さん、金曜深夜の『恋愛時代』ロケ地のかもめブックスさんをこの機会に訪ねてみるのも一考かと思います。

戦う!書店ガール ロケ地ガイド

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本屋という存在

本題に入る前に、最近の思いを少々書き殴り(ゆえに文字小さめ)。

少なくない人々にとって「書店はどこでも、なんでも一緒だ」。これは私の偽らざる気持ちである。複数の書店チェーンにいた身としての実体験である。これは店頭で受けた実際のやり取り。

(とある店舗:売上上位ナショナル書店チェーン商業施設内店舗)
とあるお客様A「(Tのマークがついたポイントカード最大手のカードを無言で提示)」

とあるお客様B「(レジ周辺を見まわしてキョロキョロ)」
        「で、おたくはどこの本屋?(真顔)」

 (別のとある店舗:新興ナショナル書店チェーン郊外店)

 とあるお客様C「ここは(老舗地場チェーン)さんじゃないの?(少々ご立腹)」

本屋なんてどこも同じ。例えば、首都圏や関西圏では都市部に商業施設や駅ビルにある「○○書店」さんという認識をされる方々がいらっしゃると思います。がしかし、地方に行くと(それが大型店舗であったとしても)「○○書店」ではなく、「本屋である」ということが優先される。そういう状況が残念ながら少なくない。そう感じております。切なくなるような、努力の足りなさを指摘されているような何とも複雑な感情が芽生えます。

書店員のお仕事とは

さて、ちょっとばかり脱線した導入となってしまいましたが、そんなほろ苦さを受けたり、数あるクレームがあったりもしますが基本的にはおおまかにいって下記4の業務(プラス5番目……)となります。

  1. レジでの販売
  2. 店頭でのお問い合わせ対応
  3. 入荷した商品(書籍や雑誌、コミックetc)の開梱、検品、準備(雑誌の付録づけ、コミックのシュリンクetc)
  4. (上記3で準備した)商品の新刊・補充品のお店だし、それに伴う返品
  5. (おまけ)時間外ほにゃらら(POPづくり、情報収集などなど)

では順を追って、どのようなをお仕事をしているのか『書店ガール』の一風景から切り取らせていただいて、見ていきましょう。

レジでの販売

昨日、バイトで嫌なことがあった。初めてと言っていいくらいショックなことだった。レジをしていたら、自分の前に来た客が突然、文句を言い始めたのだ。
「ここの店は、どれだけ客を待たせれば気が済むの」
男は五十代くらいだろうか。だけど、強面で体も大きい。

「お待たせして申し訳ありません」
レジ前には五、六人ほどの行列ができていた。一番忙しい時間帯ほどではない。
「申し訳ないじゃないよ!」
男は声を荒げて、手に持っていたプロレス雑誌をカウンターに叩きつけた。
「さっきから見てると、釣り銭ひとつ数えるのに、もたもたしやがって」
「さんざん行列で待たせたんだから、さっさと会計して本をわたしてくれりゃいいのに、ポイントカードがどうとか、籤の補助券がどうしたとか、そんなんどうでもいいんだよ!」

             『書店ガール4』p221
              (筆者により一部省略)

正直、レジでのクレームは件数として多いものではありません。しかし、上記のようなご立腹される事例はたまにある現実なのです。特に「大型書店化してレジに並ぶお客様が多いことや」、*1「スタッフを最小限にしたことにより店頭で対応する人員が極めて少ないこと」も要因として挙げられます。

不快に思われないように誠心誠意対応すること、それでいてお時間いただかないようにスピードを上げてレジオペすること。両立は難しいですが、可能な限り前者を優先させつつ、ご満足いただける販売員でありたいものです。

脇道にまたしても突っ込みますが……なぜ、あんなにレジでお渡しする系の特典を版元の方々は増やすのでしょうね。オペレーションをやってみたらいいのではないでしょうかね……(ちなみに特典自体は個人的にも大歓迎です、私が申し上げたいのは、店舗で商品に添付できない付録はもう少し企画を練り直していただけないものかということであります!!怒り新党の口調で)。

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店頭でのお問い合わせ対応

お客様の質問は書名当てクイズだ。少ないヒントから正しい答えを導き出す。自分の知識をフル動員させる。

             『書店ガール4』p9

本当にこのような問い合わせは毎日のようにあるのが現状です。テレビで放映されたり、新聞で見かけた、という質問が、「先週ブランチで見た」「(地元の)○○新聞で広告を出していた」のような具体的なものであれば推察はよりハードルが下がるのですが、どのような内容かもおっしゃっていただけない場合の難題ぶりは……

おそらくコナン君も推理できないのではないでしょうか。

ご婦人「すいませーん。探していただきたい本があるのですが」

ふぃぶ「いらっしゃいませ。どのような本でしょうか?」

ご婦人「タイトルは覚えていないのだけれど」

             『書店ガール4』p9

ちなみに店頭でお問い合わせを受けていて、「なぜ本屋で取り寄せ」をするのか。それは私の永遠の疑問でもあります(本屋にあるまじき発言)。本の在庫がない際にネット書店で「ポチっとな」するでもなく、リアル本屋に来ていただける。洋服屋さんで「(希望のサイズは)ありますか? なかったら取り寄せお願いします」、コンビニで好きな商品がなかったから、「注文して手配してください」と思うことなんてそう多くない(ように感じる)。『amazonで買う!』との発想ではなく、店頭で客注をいただけることの有難さを日々痛感しております(ペコリ)。

ちなみに私が最近受けた問い合わせへの推理で「自分でもよく答えられたわ…」とちょっぴり胸を張りたいお尋ねは、「先週健康診断を受けた時に読んだ本ありますか?」です(笑)

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入荷した商品の開梱、検品、準備(雑誌の付録づけ、コミックのシュリンクetc)

台車いっぱい積まれたコミックのシュリンクをしながら、麻美が言う。シュリンクというのは、ビニールでコミック単行本のラッピングをすることだ。この店ではコミックは新刊既刊のすべてを立ち読みできないようにシュリンクしてしまう。麻美はコミック担当ではないが、同じフロアなので、時間がある時はこうしてシュリンク掛けを分担してくれる。

             『書店ガール』p81

この記事を書いている最中に、ちょうど有隣堂さんの新店でまとめがあったので、そちらへリンク記事を張らせていただきます!*2

 

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とりあえずシュリンクは良い動画がなかったので、ブックフェアでの雑誌シュリンク実演動画をリンクしときます。現状本屋ではコミックをシュリンクすることにシュリンカーを使っているのです。

書店の新規開店までの流れはこちらのまとめが分かりやすいと思います↓

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(上記で準備した)商品の新刊・補充品のお店だし、それに伴う返品

彩加は在庫置き場に戻って作業を始める。手前の段ボールを開ける。中は読書感想用の課題図書や、図画工作の宿題のための本が入っていた。
もう秋だっていうのに、これがここに置きっ放しってますいよ。おばさん季節ものはすぐに並べとかなきゃ。これはもう全部返品かな。

…時期遅れのものは右から左に返品すればいいから作業としては楽だけど、せっかく送られてきたのに並べられもしないで裁断になるなんて、資源の無駄だなあ。

             『書店ガール4』p215

実際に画像を見ながら、拝見いただいた方がよろしいかと思い……リンク先を……ご紹介いたします。

hon.bunshun.jp

(おまけ)時間外ほにゃらら(POPづくり、情報収集などなど)*3

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まとめ「本屋の存在意義」、「書店員の存在意義」とは

書店員は地味だ。誰にでも伝わるというわけではない棚作りに黙々と情熱を注ぎ、本の補充と返品、レジ打ちに明け暮れる。万引きに頭を悩ませ、客のあやふやな記憶を頼りに、本を探す。ほとんどの場合において、客は書店員の存在を意識することはなく、自ら本に出会った気になっている。

   (中略)

しかし、書店員たちの、いかに素敵に見せるか、本の魅力を伝えるかというこだわりは、誰かの忘れられない記憶の一頁を作り出す可能性がある。そしてその記憶は、誰かの一生を左右する可能性だってきっとある。

        「書店ガール4」p285 解説 



いま、自分の店には五十万冊の本がある。その中で、五十年後にも売り続得られる本は何冊あるだろう。
   (中略)

…何がその人にとって大切な本であるかなんて、その人じゃなきゃわからない。文学的に軽く見られるケータイ小説だろうとライトノベルだろうと、大事に思う人はいるのだ。その本に会うことでこころが慰められたり、人生が変わったりすることだってあるのだ。
お客がその一冊に出合うための手助けを、我々書店員はしているのだ。

        「書店ガール2」p69

なにげない行為でも、その人の人生を変えてしまうような本をオススメすることができる場合がある。大好きな人への贈り物を迷って、たまらず店員に聞いてしまった。けれど、そこで出会った人から教えてもらった本をプレゼントしたらたいそう喜ばれた。

そんなふとした瞬間に喜びを覚える。そんな書店員がここにいます。

売り場で提供する作品が、その人の必要なものであることを願って。

書店ガール 4 (PHP文芸文庫)

書店ガール 4 (PHP文芸文庫)

 
書店ガール (PHP文芸文庫)

書店ガール (PHP文芸文庫)

 
書店ガール 2 最強のふたり (PHP文芸文庫)

書店ガール 2 最強のふたり (PHP文芸文庫)

 
書店ガール 3 (PHP文芸文庫)

書店ガール 3 (PHP文芸文庫)

 

 

書店員のリアルが、そこにある作品!

待ち合わせ場所に、暇つぶしに使っている本屋がどんな空間なのか、触れてみませんか。

悩んでいる書店員への処方箋にもなります(笑)

ちなみに続き物ですが 単独でもお読みいただけると思います。 

 

おまけ 本屋が閉店するということ

まゆゆが、言った。「お店を忘れないでいてくれるといいですね」と。

そしてもうすぐ熱心に取り組む街の本屋が、また大手チェーンの本店旗艦店が閉店しようとしている。本屋という場所がなくなるとき、私にできることは記憶に刻み込むことである。

いまは無き、「私を書店員へと導いてくれた某書店店舗」への記憶を蘇らせながら、彼らへの感謝を胸に、私は誰かに「書店員の仕事と苦悩と喜び」を伝えられたらと思っている。

 

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*1:薄利多売をしのぐ手段として

*2:あえて言おう、手抜きではない!!w

*3:さらにあえて言おう!リンク張るだけの簡単なお仕事ではないと!!w