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積読書店員のつくりかた

とある書店員が気ままに書く、本と本屋さんとそれをつなぐ人々についてのつぶやき。書店と読書とイベントな日々、ときどき趣味。

書店員のフェアの作り方【夏だ、サマーだ!】本屋の夏、その風物詩である「夏文庫」も終了間近



今週のお題「一番古い記憶」
あれはいつのころかまでは覚えていない。けど夏だった。

Yondaパンダくんがいたことだけは間違いなかったし、書店員でもなんでもない「ただの一読者」ではあった。けれど彼が一際目立っていただことは間違いない。

「Yonda?CLUB」は2014年1月24日をもって終了いたしました。

さて、エッセイ的な脈略のない書き出しで始まりました久しぶりのブログ記事。

世間的な夏休みで言えば、海水浴や花火、学生にとっては長期休暇と宿題とかになるのでしょうが、書店にとっての夏(夏休みという休みはないけれどもw)はきっと『彼ら』の存在に違いありません。 

彼らとは、『夏文庫』!
そして、今回取り上げるテーマは、書店における『フェア展開』です。

 

「夏文庫」という書店の夏を彩るお祭り

いわゆる「夏文庫」が時期的な佳境を迎えております。

新潮文庫の100冊 2015」、「カドフェス 2015 発見!角川文庫|KADOKAWA」、「ナツイチ2015 スペシャルサイト|web集英社文庫」の夏文庫しかり、

フェアのつくり方

店のフェア。お店の一等地の平台などで展開されるフェアは展示の工夫が面白く、行く度に内容が変わってついつい本を買いたくなってしまいますね。

フェアやキャンペーンは、誰がどのように決めているのですか?

文春さんのサイトでのご質問に「フェア・企画主体が誰であるか」という観点から答えるのであれば主に下記のような形。先述の版元企画の「夏文庫」フェアだけではなく、各方面から提案する様々な切り口があります。無理を承知ですが・・・分類を試みる。 

  1. 単独版元企画(版元担当者などによる考案、選書)
  2. 複数版元企画(複数出版社のセレクトによるフェア)
  3. 取次、業界団体主導の企画
  4. 書店チェーン企画(MD担当者などによる考案、選書)
  5. 書店チェーンによる個別版元フェア(同上)
  6. 書店単独企画(担当者や複数担当の考案、選書)
  7. 書店単独(複数店舗での展開もあり)の選者依頼型企画(著者や編集者、ライターなどに依頼してセレクトしてもらうフェア)
  8. 書店単独の著者特集フェア
  9. 書店単独(複数店舗での展開もあり)の参加型企画
  10. 書店横断の合同企画(各書店の有志、出版関係者などによる考案、選書)

それぞれの事例を上げたいがために9分類に体系化を試みましたがおおまかに言えば3つのパターンの細分化したもの。

  • 出版社・取次によるフェア
  • チェーン企画としてのフェア(書店チェーンの各店が同じフェア)
  • 店舗担当者発案のフェア

それでは10個のパターンごとに事例を見てみましょう!

さまざまなフェアのかたち

記憶を呼び起こす、さまざまなフェアたち*1。今夏・最近のものから懐かしの企画まで。

  1. 単独版元企画・・・夏文庫、「集英社 夏のコミックスフェア ナツコミ2015 開催中!!」、「小コレ!店頭装飾コンテスト - コミックナタリー Power Push」など
  2. 複数版元企画・・・「「本」と『本の逆襲』が拡張する、30の「気になる一節」と「次に読む一冊」フェア by 内沼晋太郎さん、全国開催中! - Togetterまとめ」や岩波書店×中央公論新社×講談社の三社による岩波、中公、講談社「知に歴史あり〈教養新書合同フェア〉」、河出書房新社の呼びかけによる出版界のヘイト傾向に抗する河出書房新社の選書フェア「今、この国を考える ―『嫌』でもなく『呆』でもなく―」、昭文社×旺文社による「名前を間違えられることを逆手に!昭文社×旺文社合同キャンペーン」、ユリイカ(青土社)×文藝別冊(文藝春秋)による 「2013/12/01 ユリイカ VS 文藝春秋 BOOKSルーエのイベント情報」など
  3. 取次、業界団体主導の企画・・・日販による「ブレイク必至!“今、一番面白いマンガ”が勢揃い!!「全国書店員が選んだおすすめコミック2015」発表niconicoユーザーが選んだ「次にくるマンガ大賞」との合同フェアを開催! | 日本出版販売株式会社」や「日販・読売新聞「ミステリーブックフェア2015」全国600書店にて3月1日(日)より実施 | 日本出版販売株式会社」、トーハン「出版社12社と連動し、第1回「文庫女子」フェア開催 | ニュースリリース | 株式会社トーハン」や同社『ほんをうえるプロジェクト | Facebook』による「ほんをうえる 明治屋「おいしい缶詰」と「父の日」販促で連携 | ニュースリリース | 株式会社トーハン」(参照:本の卸が見つけた面白い本。ほんをうえる│オンライン書店e-hon)、雑協による「【新文化】 - マガフェス第1弾、「戦争を考えよう」がスタート」など
  4. 書店チェーン企画・・・未来屋書店×絵本ナビによる「絵本ナビ 未来屋書店×絵本ナビ 絵本ナビおすすめ絵本フェア」、丸善&ジュンク堂書店×佐賀県による「佐賀県×丸善&ジュンク堂書店 「ほんのひととき」2014年8月5日より発売開始|新着情報詳細 |丸善&ジュンク堂ネットストア」など
  5. 書店チェーンによる個別版元フェア・・・今回は割愛
  6. 書店単独企画・・・紀伊國屋書店新宿本店での「【新宿本店】「ほんのまくら」フェアのお知らせ #hon_makura | 本の「今」がわかる 紀伊國屋書店」、ジュンク堂難波店での「店長本気の一押しSTOP!ヘイトスピーチ、ヘイト本」フェア(参照:【画像】ジュンク堂書店難波店が「店長本気の反在特会キャンペーン」を開始し話題に - NAVER まとめ)、丸善津田沼店さんらによる「はじめての海外文学フェア」(参照:【完全版】はじめての海外文学|イベント・フェア詳細 |丸善&ジュンク堂ネットストア「はじめての海外文学フェア」開催!(執筆者・酒井七海[丸善津田沼店]) - 翻訳ミステリー大賞シンジケート)、紀伊國屋書店新宿南店でのワクワク棚(参照:NR出版会連載企画 書店員の仕事17 「ワクワク」を基準に仕事を 神矢真由美さん(紀伊國屋書店新宿南店/東京都渋谷区))、ジュンク堂新宿店(閉店)での「ホントはこの本を売りたかった」(参照記事:閉店する「ジュンク堂」書店員の最後の本気 - NAVER まとめ、ちなみに書籍『書店員が本当に売りたかった本』にもなっております)、くすみ書房(閉店)の「なぜだ!? 売れない文庫フェア」(参照記事:くすみ書房閉店の危機とこれからの「町の本屋」 « マガジン航[kɔː])など
  7. 書店単独(複数店舗での展開もあり)の選者依頼型企画・・・紀伊國屋書店新宿本店による「【新宿本店】再延長決定! 「アメトーーク」ロケ敢行記念 「読書芸人」おすすめ本フェア | 本の「今」がわかる 紀伊國屋書店*2、青山ブックセンターによる「「100人がこの夏おすすめする一冊」 | 青山ブックセンター」、ブックファースト新宿店による「『αブロガーが薦めるベストビジネス書』フェア@ブック1st新宿店 | 鹿田尚樹の「読むが価値」」、有隣堂書店藤沢店さんによる「ビジネス書のプロが選んだ、これだけは読んでおきたい名著フェア | 藤沢店 | 有隣堂」、いか文庫さんの各書店でのフェア「書店様でのフェア Store information - いか文庫」、往来堂書店さんによる「D坂文庫 2014・冬 -往来堂書店」、長崎書店さんによる「上通の老舗本屋、長崎書店の「ながしょブログ」 : ラブンコ」、リブロ池袋本店(閉店)さんによる「新しいリベラルアーツのためのブックリスト」(※下記引用)など
  8. 書店単独の著者特集フェア・・・書楽さん「さいたまのミステリー作家“正体”明かす 小説のモデルの書店訪問 (埼玉新聞) - Yahoo!ニュース」、BOOKSルーエさんによる「2014/06/01〜6/30 夏葉社フェア」、東京堂書店さんによる「ほんのみらいをつくる‘ひとり出版社’をつくった100冊+100冊」フェア(参照:「ひとり出版社をつくった100冊+100冊」フェア開催中です | タバブックス)、久我真樹氏(d:id:spqr)と啓文堂書店さんとの「英国メイドの世界へようこそ」フェア(※下記引用)など
  9. 書店単独(複数店舗での展開もあり)の参加型企画・・・紀伊國屋書店新宿南店さんによる「【新宿南店】2015年8月5日~31日【本屋さんのお仕事を体験しよう!】 子どもたちが作ってくれたPOPとおすすめ本フェア | 本の「今」がわかる 紀伊國屋書店」、啓文社さんによる中学生の選書書籍・POP展開(参考記事:POP作り体験「啓文社」出張授業)など
  10. 書店横断の合同企画(各書店の有志、出版関係者などによる考案、選書)・・・中目黒ブックセンターさんの呼びかけによる「ホラー好き書店員と仲間たちのホラーまつり2015夏」(参照記事:猛暑を怖さで乗り切ろう! ホラー本が大集合したフェアに人気作家が参戦 - 新刊JPニュース)、『OsakaBookOneProject | Facebook』さんによる選定作品フェア(参照:西日本書店 - Osaka Book One Project 2015)、『BOOKUOKA / ブックオカ 福岡を本の街に』さんによる激オシ文庫フェア(参照:激オシ文庫も設置されています。 - BOOKUOKA / ブックオカ 福岡を本の街に)、『児童書担当者が選ぶ子どもの絵本大賞in九州「この本よかっ!!」 | Facebook』さんによる受賞作品フェア(参照:この本よかっ!! 第5回子どもの絵本大賞in九州 九州の児童書担当者が選んだ絵本大賞&BEST10 | 本の「今」がわかる 紀伊國屋書店)、「料理レシピ本大賞 in Japan » 食は本能の言葉!文字は心の叫び。」による選考フェア・受賞フェア、出版業界に関わる50人によるオリジナルの夏文庫フェア「ナツヨム」※詳細は下記記載(参照記事:夏に文庫を読むならコレ! 全国の書店に 広がる話題のフェア「ナツヨム」って何?|ニュース|西ヶ谷 由佳(啓文堂書店三鷹店)|本の話WEB)など
  11. (おまけ)フェア企画案を濱崎さんがリスト化されておられるのですがなかなか興味深いものが多く
    ブックフェ案 - ハマザキ書ク 濱崎誉史朗公式サイト

著者・選者との接点から作る書店フェアの実例

リブロ池袋本店さん(閉店)・リブロ福岡天神店さんでの『新しいリベラルアーツのためのブックリスト』の一例

 

この企画は、様々な分野の本質を学ぶことが出来る本を、それぞれのテーマに対して選者の方に3冊ずつ選んでいただく企画です。フェアに選ばれた本たちが、次の時代をひらく新しいリベラルアーツのブックリストとなれば嬉しく思います。

リブロさんについてはこちらの記事もどうぞ。

『英国メイドの世界』での一例

2010年11月の発売時、啓文堂書店三鷹店様で多く本を仕入れて下さり、先ほど事例として挙げたように、担当編集さんから「鶴田謙二さんのイラストがある帯をモチーフにしたPOP」を同書店に送って下さいました。

その後、「書店フェア」を行って下さっていることから、「私の方でラインナップを提案しましょうか」と関連書籍リストの候補とその理由(時事ネタや関連性の強さなど)を編集部に送りました。それから書店の担当の方が選定を行い、その本を紹介する短いコメントを私が考える、という流れで話が進みました。

積読書店員のフェアの作り方(企画案から展開まで)

ふぃぶりおが実際に展開したフェアを例に挙げつつ、流れを駆け足でご紹介。*3

(企画開始2か月前までに)企画案の立案、上司伺いと展開場所の調整
例えば「読書の秋は食欲の秋!胃袋を刺激するビジネス書!」、「五月病に効く、よむくすり(小説・自己啓発・コミック問わず選書)」
(同2か月~1か月半前)アイテムの選定、リスト作成(企画に合わせて各アイテムの売上なども考慮しつつ更新していく)、版元在庫状況確認、上司報告
(同2か月~1か月半前)同時並行フェアパネルやPOP(必要なときは帯も)作成*4

(同1か月前までに)選書リスト(ほぼ確定)に基づく発注

(同2週間前までに)入荷状況確認、場合により再手配

(同1週間前~数日前まで*5)拡材と商品を再度確認(帯まきまきする?)

(当日)展開に凝る!w

(その後)売り上げ状況を随時確認しつつ展開期間に合わせて在庫の薄いものは手配するなど

あら、ざっくりした説明だこと。はたして読者の方にはこれで伝わるのでありましょうか……。流れがお分かりいただければ嬉しいのですがお分かりになりました……か?

他の書店員クラスタの皆さまはどーやって作ってるんだろーな。

ちなみにこれは完全に独学であります。

書店員1年目に(というより4か月目くらいの当時初心者マークが輝いていた店員だった*6)に、当時の店長から「ビジネス書好調だし、お店の一等地空けるからフェア作ってよ」という無茶ぶりに悪戦苦闘したひよっこ書店員にどなたか体系的な教育ほどこしてくれないんですかねー(遠い目)。 

「ナツヨム」という書店・業界横断の企画フェア

実際にフェアでの展開画像をご覧いただきたいので、先日お伺いたした大阪・名古屋の書店さんでのナツヨムの風景をご覧いただきましょう*7

ちなみに「ナツヨム」とは。

ナツヨムは、出版業界に関わる(具体的には、書店員・出版社・取次・印刷会社)50人による選書と手作りオビの、オリジナルの夏文庫フェア。今回で3回目で、北は北海道から南は福岡まで、地域も規模も会社も越えた19店舗で開催されます(7/9時点※昨年時点(筆者注))。

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TSUTAYA寝屋川駅前店さんの場合

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紀伊國屋書店グランフロント大阪店さんの場合

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長谷川書店さんの場合

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Twitter:長谷川書店@ナツヨムはじめました (@hasegawabooks) | Twitter

七五書店さんの場合

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Twitter:七五書店 (@75bs) | Twitter

ナツヨムの開催

ナツヨム開催を終了しているお店もあります。開催期間は、公式ページや各店舗にてご確認いただければと思います。

さいごに 

自店も自力フェアの積極的な展開まではなかなか……というのが現状です。地域一番手を追うフォロワーとしては、全力で提案したところではありますがね。ぜひとも「気づき」があるフェアをつくれたらいいな、また「面白そうなフェアを『あのお店』でしてにかな」とご来店いただける方がでてきてくれたらいいな、そう願う積読書店員です。

「書店が提示する本が偏ってはいけない。本は自分の窓を開けるもの。多様な本を手に取ってほしい」

「反射的に言葉を発するのではなく、本を読んでじっくり考える。そのためのいろいろな価値観を提示したい」

中韓、「嫌」でなく本で「国」考えて 全国100書店がフェア :日本経済新聞

「秋」足音が近づいてきた今日この頃。今週末は、お近くに書店へ「夏」を感じにおいでになりませんか?

*1:をリンクと共に振り返ってみる((そして店舗名に(閉店)のフレーズを入れるのは切なすぎる……

*2:厳密に言えばこのカテゴリに収まらないが

*3:※残念ながら店舗名を公表しておりませんので展開画像は掲出できませんのであしからずご了承ください(笑)

*4:これに凝るのもまた一興。ただ時間がどれだけあっても納得いくものを作るのは難しい…w

*5:繁忙期は最悪前日or当日のときもw

*6:いまでも若葉マークがついていると自分では思っておりますが

*7:※いずれもお店の方にお許しを得て撮影しております。書店でなにかの撮影をされるときはぜひスタッフにお声掛けいただけいただければと思います。