積読書店員のつくりかた

とある書店員が気ままに書く、本と本屋さんとそれをつなぐ人々についてのつぶやき。書店と読書とイベントな日々、ときどき趣味。

いま擬人化マンガが熱い!『とりきっさ』『かわうその自転車屋さん』『ねこのこはな』がおすすめ!!【追記】3作品とも試し読みできます!

数年前に、「擬人化」を駆使した町おこしから、萌え絵付きの特産品まで増殖しているニュースがちらほらと流れていたのを覚えていますが、いま彼らはどうしているのでしょうか(周りであまり見かけないだけ?)。

そんな「擬人化」も、コミックの世界では進化っぷりが斜め上過ぎる作品もあったりなかったり。いまや『艦これ』、『刀剣乱舞』と言い、なかなか奥が深い進化っぷりを見ることができるこのジャンル。

一口に「擬人化」と言っても、ツイッター界隈では、絵描きクラスタさんを中心にして、よくよく思い起こせばアンパンマンから、トンデモナイものまで擬人化されていたりして驚かされます。

本当に驚かされます…いろいろと。

代表的な擬人化マンガ、擬人化イラスト本

えー本題に戻りまして、『擬人化』関連の書籍化タイトルを中心に、リストを挙げて参りますので最下部の超おすすめ作品3作のご紹介まで、ぜひお付き合いくださいませ。

タイトルを正しく言えば「いま擬人化マンガが(個人的に)熱い!」ですw

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【W杯決勝目前】なでしこジャパン佐々木則夫監督の『なでしこ力』を読んで、さぁ、再び一緒に世界一になろう!

初めて佐々木監督の会見を映像で見たとき、なんてお茶目な監督なのだろう!と思うと同時に、こんなにも脱力気味のサッカー監督が日本代表の監督で大丈夫なのだろうか。そう感じた記憶がある。

けれども、本書『なでしこ力 さあ、一緒に世界一になろう!』を読んで感じる彼の姿勢は、実直かつ、チームマネジメントの側面からもサッカーにおける戦術面でも理路整然としており、人生におけるトライ&エラーをもざっくばらんに話す内容に、とても好感を持って読むことができる。

「組織はリーダーを映す鏡である」*1という趣旨の言葉は、トルシエ・ジーコジャパンで日本代表コーチやアテネ五輪日本代表監督を務めた山本昌邦氏の方が語った言葉であったと思うが、彼の言葉を借りれば、

なでしこジャパンは、佐々木則夫という存在に共鳴した組織・チームである

と言えるのではないだろうか。著書を紐解き、なでしこジャパンという仕組みを形作った彼の言葉を振り返ることで、決勝へと望む「大胆」で、「勇敢」な輝く花たちへのエールとしたい。

目次
第1章 はじまりは、アクシデント
第2章 ひたむきさとは、「できる」と信じる心
第3章 最高の仲間たちと
第4章 新しい力
第5章 世界がたたえる「なでしこ力」
第6章 横から目線
第7章 歩々是道場
第8章 なでしこたちから学ぶこと
第9章 則夫力
第10章 金メダルの重み
第11章 なでしこの未来

なでしこ力 さあ、一緒に世界一になろう! (講談社文庫)

なでしこ力とは

心を一つにする。
厳しく濃密なトレーニングにも高い集中力で取り組む。
崖っぷちに追い込まれても絶対に諦めない。
どんな相手にも、臆することなく普段どおりの自分を表現する。
そして何より、大好きなサッカーをとことん楽しむ。

これら、日本の女性に備わるポジティブなパワーを、僕は「なでしこ力」と呼ぶ。

『なでしこ力 さあ、一緒に世界一になろう!』第1章

なでしこの選手たちは、アグレッシブだ。その根底にあるのは「サッカーを楽しんでいる」こと、前回の決勝で見せた宮間選手のアメリカ選手への対応といった「相手を敬う」こと。失敗を恐れず、結果を気にせず、目の前にある仲間とのサッカーを純粋に楽しむ。

*1:佐々木則夫、山本昌邦『勝つ組織』より

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『きみはいい子』は、降り止まない雨の日を超えて、晴れ渡る空に虹が浮かぶ。6月27日公開映画の原作をおすすめしたい

私は父が嫌いだ。いや、正確な表現で言い直そう。私は、父親が地球上で一番嫌いだ。大嫌いだ。

デカい声。無神経さ。自信過剰さ。無慈悲な行動。家族を顧みないところ。一方自分の趣味にはなにをしても許されるという態度。そのすべてを。

人は親から生まれてくる。その親を選ぶことはできない。将来遺伝子をいじって親に都合のいい子どもを選択できたとしても、子どもにとっては選択することはできない。

目の前には、親がいる。梅雨の季節に降りやまない雨のように、逃れることができず天から降ってくる。

あたしはみんなおぼえている。

小さな小さな手。のばすと、大きな手ではらいのけられた。手をつないでほしかっただけなのに。小さな手は、大きくなり、今、小さな頭をひっぱたく。

おさえられない怒りにつながる、忘れられない記憶。

あたしはみんなおぼえている。

『きみはいい子』p97

きみはいい子あらすじ

先週末27日から公開されている映画の原作小説『きみはいい子』を、今回ご紹介したい。

ある雨の日の夕方、ある同じ町を舞台に、誰かのたったひとことや、ほんの少しの思いやりが生むかもしれない光を描き出した連作短篇集。

夕方五時までは家に帰らせてもらえないこども。娘に手を上げてしまう母親。求めていた、たったひとつのもの―。それぞれの家にそれぞれの事情がある。それでもみんなこの町で、いろんなものを抱えて生きている。心を揺さぶる感動作。

「桜が丘」というとある町を舞台にして、「学級崩壊」、「モンスターペアレンツ」、「児童虐待」、「育児放棄」、「郊外」、「高齢者の社会的孤立」、「認知症」などをテーマに、身近に潜む存在たちを、丁寧に取り上げた珠玉の短編集。

扱うテーマは大変重たく、手に取ろうとする人も躊躇するかもしれない。けれども、その筆の進み具合は、リアリティに照らしている一方で人に対する優しさがつまっている。思いやりが溢れている。

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